平成3年(1991年)7月9日 タウン誌おのおの 第30号掲載
二瓶 晃一 (執筆当時29歳)
小野新町駅にお目見えした「羅漢像」。これが私の身近な人達にすこぶる評判が良くない。
その人達とは、世代的には若い人も80歳ぐらいのご年配の方も様々なのだが、「羅漢様は信仰の対象なのだから、あんなところに宣伝の為に置くべきではない」「まちのイメージが羅漢では暗すぎる」「新聞で見たけど寂しい感じがするし、夜見たら不気味で怖い」と、みなさんの御意見は、ざっとこんなところだ。
で、私の考えはと言うと、実は私もあまり良くないと思っている。
町行政の開発理念の3つのR(リゾート・リサーチ・レスペクト)の中に、レスペクト(respect=尊敬・敬意)を添えたというのは大変すばらしい事だと思う。そういう構想から「羅漢」という発想が出たのだと思う。だが、一連の動きをみると何故か本来の目的からかけ離れているような気がしてならない。
大事なのは「羅漢像」ではなく、それに対する自然発生的な信仰心なのだと思う。山の神・川の神・ふるさとの自然。自分と自分の先祖の生きてきた大地、そしてその生き様への尊敬の心が大切ではないだろうか。その祈りの心が入ってこそ「羅漢像」は「羅漢様」となる。ならば、一つでも多く東堂山に奉納してほしい気がする。
今世紀中に五百にするなどと気をもまなくても、新しいものを無理に町のイメージにつくりあげなくても、一つ、ひとつ心を込めて奉納していけば、それはやがて「五百羅漢」になる。そして長い年月が過ぎ、欝蒼とした東堂山の杜の中で苔むしていくごとに「名勝」と呼ばれるようになるはずだ。
取り敢えず駅の「羅漢像」を東堂山に遷してあげたい、そんな想いにかられる。そしてそれは、何かしら「羅漢様」自身が望んでいる…そんな気がしてならないのだ。
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