伝説の絆


平成8年(1996年)1月1日 年賀状

二瓶 晃一 (執筆当時33歳)

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 小町温泉は、その名の通り小野町の「小野小町生誕伝説」にちなんで命名されている。六歌仙にもあげられる歌人であり、今も美女の代名詞となっているこの平安の女性にまつわる伝説は、全国各地に残っているのだが、昨年、それらの地域が集まって第一回の小町サミットが開催された。                                

 会場となった山形・小野川温泉には、ちょっとした思い出があった。ちょうど家業を継いだ頃「小町の伝承を卒業論文にするから」と、この温泉のあるホテルの娘さんが、私の家を訪れてくれた事があったのだ。山口さんと言う方だったが、随分、美人な方だったので多分、特別覚えていたのかもしれない。思えばそれが私自身の小町伝説との「つきあい」の始めの様な気がする。 当日の会場では、秋田・雄勝町、茨城・新治村、それに京都・大宮町の方々など、久しぶりに会ったり、名前だけで面識のなかった方々とも会う事ができ、その上「逆説の日本史」でお馴染みの井沢元彦さんの鋭い推理なども聞く事ができて、ほんとに楽しい一日を過ごす事ができた。 山口さんと出会ってから、もう十数年の年月が経た。その間に、多くの人達が小町の伝説に魅かれて私の所を訪れてきてくれ、そしてまた、私自身も、町の仲間達とともに出掛

けて様々な人達と出会った。                              

 今年、第二回の小町サミットが小野町で開催される。全国で七十ケ所以上にもなる、小町のゆかりの地。遠い昔のミステリアスな伝説がつくってくれたこの出会いを、また、心をあらたにして大切にしていきたいと思う。