●今上天皇との「旅」が終わる
「天皇としての旅を終えようとしている、今…」
そんな印象的な言葉が語られた昨年の天皇誕生日の前日の天皇陛下のお言葉を聞きながら、あらためて日本に生まれ育った事、そして日本人である事を誇りに思った。
宮内庁は「上皇」「皇太弟」という歴史用語を、あえて使わない方針だった様だが、歴史的に定着しているという事で、今上天皇の御退位後は「上皇陛下」とお呼びする事になるらしい。「上皇の誕生」は江戸時代の光格天皇(1771-1840、院政期間1817-1840)以来約200年ぶりとなるそうだが、お立ち場は変わっても、今後も日本国民を、温かく見守っていていただければと思っている。
●忘れ得ぬ皇后陛下のお振舞い
今上天皇ならびに皇后さまのご在位中の戦没者や被災地への対応は、すべての国民にとって心うたれるものであったが、私にとって最も印象に残っているのは、昨年、平成30年(2018年)、福島県南相馬市で開催された全国植樹祭での事である。
参加した知人に「どうでした?」と聞いたところ
「皇后さまが雨で濡れた地面に両膝を着けて山桜の苗を植え、更に素手で土を寄せ固めている姿を見て驚き・感動した」
と話してくれた。「我々は支給された軍手で植樹をしていたのに、本当に人間の大きさというものを感じた」とも語っていた。
当日は肌寒い小雨の降る日で、報道によれば皇后さまは微熱があったとの事。天皇陛下が退位されるという事は、当然、皇后さまもその地位を退き、皇太后となられる。初の平民皇后として、並々ならぬご苦労もあったと思うが、その振る舞いの素晴らしさが私たちの心に深く刻まれている。友人の話が良く伝わる写真が福島民報の一面に掲載された。この姿を見るのが、福島県民だけではもったいないので、少しだけみなさんに紹介したかった。
●小野町と天皇・皇后両陛下
その全国植樹祭前日の歓迎レセプションに出席するため天皇・皇后両陛下は、郡山まで特別列車でおいでになり、そこから車でいわき市・スパリゾートハワイアンズに向かわれた。それを報道で知った私は「どうせなら磐越東線に乗っていただければ良かったのに…」と勝手な事をつぶやいてしまった。
実は、今上天皇が初めて福島県を訪れた皇太子時代の(まだ私が生まれていない)昭和36年(1961年)5月31日、「第4回放魚祭」に出席するため、福島県庁から磐城まで列車で移動され、小野新町も通られたからだ。小野町の老舗の豆腐屋さん(新菊豆腐店)は「三角油揚げ」を持って小野新町駅までお見送りに行ったという。
誰も進言しなかったのか、進言しても技術的な事や諸問題でダメだったのか、ちょうど昨年、磐越東線全線開通100周年を迎えた事もあり、実現できれば最高だったのだが…
そんな私に知人が「でも、今回は小野インターで小休憩をしたみたいだよ」と教えてくれた。今上天皇が、ご退位までに再び福島県を訪れていただける事があるのかどうかわからないが、今のところ最初と最後は一応小野町に「お立ち寄りになった?」事になると、妙に満足しながら約60年前の写真をながめている。
今上天皇の御退位とともに変わる年号。時代が変わる節目の年を迎えて、気持ちをあらたにがんばりたいと思う。
こまちvision 代表(担当) 二瓶 晃一
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